IoT時代の到来
製品の性能・品質だけで勝負できた時代は、過去のものです。
日本の製造業が得意としていた「モノ」創り技術で実現された高品質が差別化要素になっていた時代は、残念ながら過去のものです。
また、同じように得意としていた小型化技術などを駆使し、価格性能比を高めることが差別化要素になり売れていた時代も過去のものです。
それでは、差別化に何が必要なのでしょうか?BtoB, BtoCを問わず顧客が認める「価値」を提供することが必要だと言われてから久しいです。いままでも、ビジネスモデル=儲ける源泉の変革が必要だと言われ続けてきました。それでは、IoT時代のビジネスモデル変革は今までと何が違うのでしょうか?
顧客が認める「価値」とは何かを突き詰めると、BtoBにおいては、顧客の顧客がその業界で有利になるものを提供することであり、BtoCにおいては、顧客が目指しているライフスタイルを提供することになります。個人の場合、その方が置かれている環境により、生存から自己実現まで目指しているライフスタイルは幅広くなるので、どのセグメントでビジネスを行うかの見極めが重要になります。
「価値」を提供するという観点からは、IoT時代だからといって大きな違いはありません。異なる点としては下記の3つがあげられます。(下図参照)
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競争相手としてのグローバル企業が出現した
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テクノロジーの進化で、様々な場所と場所でのデータ交換がより簡単に安全にかつ比較的安価に行えるようになった
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消費者の情報収集行動がインターネットやSNSの普及で大幅に変わった
結果次の様な影響が経営環境に及ぼされています。
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圧倒的にコスト効率のいい競合製品との戦いを強いられることと、国境を越えた戦いを「市場」「資材調達」「生産能力」「人材確保」で行わなければならない
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データを活用して顧客に価値を提供する能力が必要になることと、価値を提供するIT基盤をグローバルな視点で構築・運営するIT能力の獲得が必要になる
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顧客の行動を複数のチャネルにわたり俯瞰する必要が出てきたことと、すべての顧客接点で消費者経験の統合が必要になってきた
IoTでビジネス変革しグローバルに儲ける
このような環境下での事業改革はどのように進めればよいのでしょうか?
考慮しなければならない課題は、次の5つだと考えられます。
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顧客が法人・個人なのか、国をまたがるのか、法制度・規制への対応が個別に必要なのか、顧客の評価する内容が違う等々の理由で、ITインフラ及び商品・サービス毎で要件が違ってきてしまいがち
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ITインフラを構築する際に、商品・サービスごとに行っていたのでは費用が膨大になってしまう
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同様に、商品・サービスごとにITインフラを構築していると、それぞれに期間がかかりビジネス戦略上の足かせになってしまう
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商品・サービスの開発において、対象セグメント毎にバラバラの仕様だと規模の経済を追求できなくなる
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対象セグメント毎に商品・サービス開発を行っていると、社内リソース(人、モノ、金、情報)が分散されてしまう
これらの課題に対応しながら事業改革を進めていく際のキーワードは、「全体俯瞰」、「グローバルチーム」、「グローバルリーダー」です。
IoT用ITインフラ整備と、商品・サービス開発の2つの軸でそれぞれ改革を進めていく必要があります。
なぜ「全体俯瞰」「グローバルチーム」「グローバルリーダー」が重要なのかは、次のセクションITインフラ構築をお読みください。
IoT時代における事業改革の進め方
IoTサービスを提供するために、必要なシステム要素は次のようなものになります。
1) 製品クラウド
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スマート製品のアプリケーション:製品の外部に常駐し(多くは、遠隔サーバー上)製品・機能のモニタリング、制御、最適化、自律的運用を管理するアプリケーション・ソフトウェア
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ルール/解析エンジン:ルール、ビジネスルール、ビッグデータ解析のためのエンジン。
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アプリケーション・プラットフォーム:アプリケーション・ソフトウェアの開発・実行環境。ユーザーインターフェース、データ・アクセス、接続機能などの共通機能を提供し、開発の迅速化と品質維持を行う。
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製品データのデータベース:製品ごとにビッグデータ解析に必要な、データベース。
2) 接続機能:製品と製品クラウドの通信を実現するプロトコル。
3) 製品。
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製品ソフトウェア:組み込みOS、搭載アプリケーション・ソフトウェア、製品制御部品。
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製品ハードウェア:従来の機械部品、電機部品を補完するセンサー、プロセッサー、接続用ポート/アンテナ。
4) 外部情報源とのゲートウェイ:価値提供に必要な外部情報源及び接続相手(m2m, h2m等)からの情報取り込み口。
5) ID管理とセキュリティー機能:ユーザー認証、製品(m2m)、接続機能、製品クラウドなどの各階層のセキュリティー確保を担う。ソフトウェアでは、対応しきれないケースがあり、よりミッションクリティカルな場合にはハードウェア化する場合もあり。
新しい技術群の図をご覧いただければお分かりになると思いますが、顧客に価値を提供する要素を支えるインフラとして製品群ごとに個別であるべきな技術要素は製品アプリケーションとルール・データ解析のエンジンのみです。
それ以外の標準化を行い、その上で商品・サービスごとの差別化価値を設計・開発することで、課題2,3にあたる全体の工期・費用を短縮する事が可能になります。
また、全世界に提供するすべての商品・サービスに対応していくために、標準化されたインフラを維持・強化するグローバルな組織を立ち上げ運営することで、様々なアプリケーションからの要求を標準化を維持しながら取り込むことが可能になります。
これらの標準化されたITインフラを構築運営するためには、業務システムの構築運営とは違うスキルセットが必要になります。
また、構築の際のアプローチも、個別要件の積み上げ、またはある地域でパイロットシステムを構築してそれをロールアウトするアプローチではなく最初に全体を俯瞰し、どの要素を「グループ全体で標準化」「製品群ごとに標準化」「個別に開発」の3つのグループに分類するかを決定し、全体の枠となるデータベース、アプリケーションプラットフォームを構築してから個別の開発に入っていくアプローチが必要になります。
このアプローチを実行するために「全体俯瞰」の観点を持ち続けること、実行を推進する「グローバルチーム」を組成すること、グローバルチームのメンバー及びリーダーとなる「グローバルリーダー」が重要なのです。
次に、商品及びサービスを作り上げるアプローチについて議論します。
ここでのキーワードも「全体俯瞰」、「グローバルチーム」、「グローバルリーダー」になります。
これは、上述の課題1,4,5への対応のためです。従来の商品及びサービス開発で一般的だった、ある地域での要件を基に開発を行いその後別地域へ展開するという手法では、上述の課題1,4,5への対応が難しくなってしまうからです。また、従来のアプローチでは商品及びサービスのグローバルでの立上に時間がかかってしまい、ビジネスチャンスを逸するリスクもあります。
開発アプローチを実現するための最初のステップとして、次の様な能力を持った人財を開発する商品・サービスが対象としている全地域から集め、チームを組成する必要があります。
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マーケティング・営業
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製品開発(メカ、デザイン、電気、ソフトウェア)
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生産技術
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サービス
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ITアーキテクチャー
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製品アプリ
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ビッグデータ分析
後述しますが、従来の国別人事モデルではこの際に様々な課題が浮上し、チームそのものの組成が難しい状況に陥るリスクがあります。しかしながら、課題1,4,5への対応を行うためにはこのチーム組成が必要不可欠になります。
また、場所別で損益責任を持たせていると、このような国をまたがった活動を行う上で大きな阻害要因になることも想定されます。
対応策については、企業ごとの状況により異なります。この対応策詳細及び商品・サービス開発アプローチについてのご相談は「IoT時代の商品・サービス開発アプローチについて相談する」ボタンからお問い合わせください。
IoT時代へ対応するためのITインフラ構築
まずは、IoT製品やサービスを構築するために必要なITインフラについて議論します。
IoT時代の事業改革に必要不可欠なITインフラに必要な要素及び必要な標準化度合は、下の図のようになります。
IoT時代の製品・サービス開発アプローチ
次に、IoT時代に上述の様なITインフラ、商品・サービスを開発する際の課題について触れます。
実行時には企業変革を行う際の3つの壁に遭遇するリスクがあります。対応方法は「3つの壁を打ち破り、変革を成功させるには?」を参照ください。
取組の準備段階で遭遇する課題は、大きく分けると組織及びアカウンタビリティーに関する課題、責任者・メンバーの選定の課題と人事関連の課題の3つに分類できます。
【組織及びアカウンタビリティーに関する課題】
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取り組みの責任者:誰が、何処で、どの様に(兼務、専任)、どの予算を使って(費用と収益がどこに帰属するということと費用の財源をどのように確保するのか)?
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取り組みの推進者:誰が、何処で、どの様に、どの予算を使って?
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商品・サービス開発の進め方:誰が、何処で、どの様に、どの予算を使って?
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プロセス定義(商品・サービスの販売、実施、アフターサービスをどの様に実行するか):誰が、何処で、どの様に定義、実行、どの予算を使って?
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ITインフラ:誰が、何処で、何を、どの様に、どの予算を使って?
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グローバル顧客管理:誰が責任者で、どの様なチームをどこで編成し、それぞれの役割分担がどう定義され、それを行う手順・ツールは誰が定め、どの予算を使って?
IoT時代の事業改革推進時の課題
人事関連の課題は、多くの日本企業が過去に海外事業において悩まされてきたものにも同時に対応が必要になってきます。従来からあった課題としては、次の様になります(下図の単色水色)
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優秀な人材を雇用したいが、地元、欧米企業にとられてしまう
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せっかく優秀な人材を雇用したが、短期間で辞めてしまう
新たな課題として、
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事業改革に参画してもらいたい人財を雇用したいが、ポジション、所属組織が現行制度では決められないため雇用できない
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取り組みへの貢献を評価したいが、現行制度ではその枠組みがない
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取り組みに参画しているスタッフの処遇がバラバラなために、不満の種になっている
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取り組みに兼務で参画している人財の関与時間が、どうしても所属組織の作業優先になってしまい取り組みのボトルネックになっている
IoT時代の人事関連課題
これらの課題の根本原因は次の様なものです。
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働く場所として魅力的だという事が伝えられないキャリアパス・ジョブディスクリプションしかない
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過去に多くの国際プロジェクトにかかわってきた経験によると、日本企業の海外事業に雇用されている人たちにとって自分の将来が輝かしくない思うことが転職へのプッシュ要因になっています。
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一般的に、給与額で転職を繰り返すという誤解があります。日本人と同じで、給与額のみで転職を決意する人も中にはいますが、企業にとってこのようにな人々は辞めてもらってもよい人材です。
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本当に必要な、「求められる人財」は国籍を問わず、仕事の内容、よりチャレンジングな仕事に挑戦できるキャリアパスがあるのか?この企業で働くことが、自分の市場価値を増大させることになるのか?を職選びの基準にしています。
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国をまたがった活動への対応をする人事規定が未整備
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国をまたがった活動を評価するための手順、評価尺度がない
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国をまたがった手順、評価尺度が無いという事は、改革メンバー選定を何を基準に行うかが不明確になり、改革の失敗につながるリスクもあります。
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国をまたがった、活動へ責任・権限規定がない
IoT時代の人事関連課題への対応
以上の様な課題に対応し、IoT時代の事業改革を成功させるためには、一定の職務以上を対象としたグローバルで共通に使う、人事規定、キャリアパス、評価制度を確立し運営していくことが必要です。
また、その際の責任権限を明確にするためには、事業の遂行に必要な機能を持った組織と、地域での組織を同時に管理するマトリックス組織を立ち上げていく必要があります。
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【メンバー選定に関する課題】
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参加メンバーを誰が、何を基準に、どのような手順で選定し、どの様に異動させるか?
【人事に関する課題】
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参加メンバーのレポートラインはどのようになり、各メンバーの評価(期間業績及び昇進)を誰が、どんな手順で、何を基準に、行うか
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参加メンバーの異動が必要な場合の手続き、待遇をどのように決めるか
以上の様に、数だけではなくそれぞれ対応することが非常に難しい課題に直面することが想定されます。